① 仕上げの1か月での講習留意点は何ですか?
  そのためのツール、ロケーションはどのようなものがありますか?
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② 入国時期、出身国、送出し機関が違う実習生を纏めて教育することの留意点は? ⇒⇒

③ 「読む」「書く」「話す」「聞く」のうち、教育する上での優先順位は?
  特に、「話す」力の効率的な身に付けさせる方法は?
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④ 個人の仕上がり評価はどのようにしますか? ⇒⇒

⑤ 日本の習慣を身に付けさせる手法は何ですか? ⇒⇒
 
1 オフィス・ショウ日本語教室の講習の目的は、実習生の皆さんが日本で生きていくための知恵をたくさんインプットしてもらい、彼らが日本での生活・実習生活に順応し易くすることにあります。つまりサバイバル日本語を習得して貰うことです。彼らは、留学生・研究者ではありません。日本語能力試験もN4程度の力を持てば十分だと考えています。無論個々人の努力を持ってN1やN2を獲得すること、作文大会や弁論大会に挑戦することは結構なことですが、当教室は、その支援をしているわけではありません。
 実習生の中には、N1やN2合格が目標という方もいますが、当教室には、様々な背景を持った方々が集まり、その日本語能力も千差万別です。ですが、彼らが共通して抱いているのは、これから始まる異郷での生活に対する不安です。当教室は、その不安を少しでも和らげることを心掛けています。では、それはどうすればできるのか。これはとても難しいことのように思いますが、当教室は、彼らが安心して暮らせる“家”であり、教師は彼らが心を許すことができる“父母兄弟”たらんと心掛け、彼らに体当たりで接しています。笑いあり、涙あり、狭いながらも楽しい我が家で愛情をたっぷり注ぐ。それが、オフィス・ショウ日本語教室です。


2 特に注意すること気をつけることは、ありません。一カ国の実習生だけになるより、数カ国の実習生が集う方が好ましいのです。そうした環境で留意することとして、座席配置があります。教室の座席は、同じ国の人が隣り合わせにならないようにします。日本語レベルも様々ですが、レベルの低い実習生の隣には、レベルの高い実習生を座らせます。教室や宿舎で実習生が行う各種作業(清掃・調理)も違う国の人とペアを組ませたり、先輩と後輩のペアになるようにしたりという作業シフトを作成しています。


3 話す力が大事です。しかし読む力・書く力が伴わなければなりません。正しく読んで、書けなければ、話すことができないと考えています。そしてそれらの力が不完全だと聞く力も育ちません。優先順位をつけることは難しく、これらの力が同時進行・相互に補完できるように工夫しなければならないと考えています。読書百編意自ずから通ずと言います。当教室では、「日本の生活案内(JITCO)」や「健康管理ガイドブック(JITCO)」の対訳版を一人一人に配布し、それを音読させます。しかしただ音読するだけでは、意味が無く、きちんとその意味を実習生が確認し、講師が深く説明を加えるという手順を踏んだ授業を行います。そして音読ですが、その発音・アクセントの間違いを正してまいります。
またこの授業では、テキストの言葉(漢字)の読みが正しく出来ることを要求し、テストも行います(このテキストの中の語彙は、日本語能力試験N4・N3の宝庫です)。「一緒」=「いっしょ」、「近所迷惑」=「きんじょめいわく」、正しく書けるかテストします。「一緒」は、「いつしょ」でも「いっしょう」でもなく「いっしょ」ですよということを教えてまいります。長音については、特に詳しく教えて練習をします。正しく読めなければ正しく話せないのです。
また「歌の練習」で、滑舌訓練します。日本の歌を10~15曲覚えていただきます。そして大きな声を出して歌って貰います。例えば、中島みゆきの「糸」という歌がありますが、難しい歌です。簡単な歌「翼をください」から始めて、「糸」が、ゴールです。
この「糸」が歌えるまでになれば滑舌訓練終了です。簡単な曲でも「翼をください」は、ベトナム人実習生には、難物です。ベトナム人は、「つ」を「ちゅ」と発音します。この「翼をください」を幾度も練習し「ちゅばさをください」から「つばさをください」と正しく発音できるまでにしていきます。


4 仕上がり具合の確認・評価は、困難です。ただ、いつの間にか進歩しているのです。語彙もいつの間にか増えています。教室に来たときは、何も分からずにいた人も、もうすぐ会社に行くという頃には、新しく来た実習生の先輩として指導しています。今(午後九時三十分)この文書を書いていますが、教室は、自習時間も終わりフリータイムです。
みんな思い思いに過ごしていますが、中国の実習生とインドネシアの実習生が、楽しく日本語で会話をしています。ベトナムの実習生は、テレビの画面に釘付けです。アメリカ映画「ダイハード」(日本語吹き替え・日本語字幕)を見ています。初めの頃は、テレビを見てもさっぱりわからないという様子でしたが、今はもうすっかり日本のテレビ番組や映画を楽しんでいます。ここまで来れば大丈夫。いつの間にか変化しているのです。


5 授業では、「ウオーミングアップ」と称していますが、日本の習慣や決まり事、様々な知識を教えています。映像や画像も見せながら理解していただいています。当教室では、日本に着いたその日から、教室の玄関に足を踏み入れたその瞬間から日本の習慣を体を持って理解していただくべく厳しく接します。間違いがあればその都度指摘し、直していただきます。何度でもいたします。何度も何度も繰り返して教えてまいります。ここは、日本です。と言うことを繰り返し話します。そしてこれもまたいつの間にか、出来るようになっているのです。手法と言うとおこがましいのですが、ただ体を張って、時には厳しく、また諭すように、繰り返し、繰り返し、果てしない闘い。それしかないと信じています。



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